くず桜の由来

 あんを葛(くず)で包み、これをさらに桜の青葉に包んだ和菓子である。 葛(くず)とは、
豆科クズ属のつる性多年草。 根を干して、葛根を作り解熱薬にもするが、根からはくず粉をとる。 現在は、ジャガイモのデンプンの「かたくり粉」で代用することが多い。 くず粉の生産で有名な大和国(奈良県)吉野郡の国栖(くず)という地名に由来し、 修験道の祖・役小角が、吉野の山奥で修行中、葛の根から澱粉をとり、飢えをしのいだという伝説もある。
 くずを使って作る和菓子の銘には、その透明感・涼感から 「水」を付けることが多いのは周知の事実でもある。

 

「山路に石段ありて葛の花」 高浜 虚子

 

 余談ではあるが、葛は秋の七草で、生命力が強く、乾燥した土地にもよく育ち、
土地を覆うように横に延び、水分の蒸発を防ぐ役割もするので、
日本中から葛の葉のたねを集め、沙漠の緑地化に役立てようとするプロジェクトがあった。
  残念ながら放牧されている羊などの動物たちにあっという間に食べられてしまい、別のやり方を模索中なのである。
 大阪で万博が開かれた後、山が削られた跡地にセイタカアワダチソウがすごい勢いで繁殖した時に、敢然とたちむかった国産植物がこの葛だったというのは言うまでもない

 

大無限寿出版刊 『葛に見た和菓子と大和魂』より一部抜粋

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