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漢方と民間薬百科:大塚敬節著(主婦の友社) |
民間薬 |
民間薬という言葉は、明治時代になって用いられたが、徳川時代には、救民の妙薬・俗間の秘薬・ 奇方・和薬・救急薬などの名で呼ばれていた。 水戸の医師、穂積甫庵は、藩の命を受けて「救民妙薬」という書物を書いた。甫庵は、この本の序 に、「大君が私に命じて云われるに、田舎で貧しい暮らしをしている人達のところには、医者も居 なければ、薬もなく、これらの人が病気になると、自然に治るのを待っているだけである。その為 、不治に終わるもの、死ぬるもの、生涯の廃人となるものなどがいるが、これらは皆、天命でなく 非命である。 そこで、これらの人々を救うために、簡単に用いることのできる薬を集めて、これらの使用法を書 いてみるようにとのことであった。そこで私は、身辺にある手に入りやすい薬を集めて百九十七方 に、救民妙薬と名づけ、山間・僻地の人々に与えることにした。 民間薬は、一般大衆が医師の指導によらないで、素人の判断で用いる民間伝承の薬であるから、 入手が容易である事と、用いて危険の無いことが大切な条件である。効果があっても、危険を伴 うものは、民間薬ついては不適切である。 民間薬の材料は、植物・鉱物・動物の広範囲にわたっているが、今日では植物を原料としているも のが最も多い。 |
漢方薬と民間薬 |
民間薬は原始的で、素朴な薬であるが、今日の新しい薬の母胎でもある。どのような民間薬にも、 その民族固有の民間伝承の薬がある。近大医学で用いられているアヘン製剤にしろ、ジギタリス にしろ、いずれも民間薬から生まれたもので、漢方薬もまた民間薬から発達したものである。 民間薬と漢方薬とは、互いに関係があって、材料として、この両者を区別することは難しいが、民 間薬は単味あるいは二つ程度で用いるか、もし処方として組み合わされていても、簡単なものが多 く、医師の診断を必要とせず、素人判断で用いることができるものだが、漢方薬は、いくつかの薬 を配合した処方になっていて、使用上の目標が決まっているので、専門家の診断に基づいて用いな ければならない。 民間薬と漢方薬との区別は、その使用法にあると云えますが、ドクダミ・ゲンノショウコ・セン ブリなどは、民間薬として用いられ、漢方薬としてはあまり用いません。 |