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  食べ物の話
  食べ物の性質と作用
 
 四気:熱・温・涼・寒

 食べ物の性質と作用を計る物差しに「四気(しき)」というものがあります。四気は四性とも呼ばれ、食べ物を口にしたとき
 の味覚から、その作用を分類する方法です。ハッカを口にするとスーッと清涼感を感じ、トウガラシを食べるとピリピリして熱
 感を感じます。

 今度は、それらを飲み込むと胃の中までスーッとしたり、カッカとするものです。食べ物が体内に入ってどのような作用が起
 きるかを、口の中に入れた感覚と連動させ、一つの物差しを決めたのが「四気(しき)」で、寒(かん)・熱(ねつ)・温(おん)・
 涼(りょう)の四つ段階をもって表します。

 寒・涼は、身体を冷やすという性質を持っており、抗炎作用、鎮静作用などがあります。温・熱は、身体を温める性質をもっ
 ており、興奮作用あります。四つに分類してますが、実際には寒熱(かんねつ)の二つに分けられ、寒と涼では寒の方が作用
 は強く、温と熱では熱の方が温める作用は強いと言うことです。

 
これ以外に、寒熱に偏らない中間的なものを「平」と呼びます。そして、代表的な食べ物が「お米」です。ご飯は、寒熱に偏
 らず「平」に属するので、長期に食べても、負担とならならず飽きもきません。

 「熱→温→平→涼→寒」生薬は更に細かく微温とか微寒など分類をしていますが、 上記の範疇に
 変わりはありません。

 食べ物のことですから、寒温と言っても調理の方法でかなり差がでます。例えば、寒涼性のもの
   温性の物でも、調理で温かくしたり冷やしたりすると、その性質は変化します。


  
 『四気の変化』

 四気の性質は決して固定されたものではなく、調理法や他の食物との組み合わせによって変化する。たとえば、ダイコンは
 生では「寒」に属するので、冷え症の人はダイコンおろしなど生で多食するとひどくなる。

 しかし、おでんのように煮て食べると、「寒」の性質 は変じて「平」となり、冷え症の人でも害なく食べられるようになる。
 さらにダイコンの水煮に、温性のショウがを使って調理すると、こんどは身体を温める働きの料理に変身することになる。
 切り干しダイコンや沢庵漬けなども、同様な変化がおこっている。
 
   
『四気のまとめ』

 
熱と温
  寒冷性の邪気(寒さ、冷たい飲み物、雨にぬれるなどの害)を追い出す作用、身体の活動エネルギーの不足を補う作用・
  身体の活を抑制させるシステムを開放する作用などがある。新陳代謝を活発にして、興奮させる食べ物である。

  ニッキ(熱)、もち米(温)、やまのいも(温)・クリ(温)・クルミ(温)、カボチャ(温)、ニラ(熱)、ネギ(温)、ニンニク(熱)
  ショウが(温)、ピーマン(温)、さくらんぼう(温)、モモ(温)、牛肉(温)、マトン(熱)、鶏肉(温)など。


 
寒と涼
  熱性の邪気(暑さ、濃い味、脂っこいもの、酒の害)を取り除く作用、身体の機能亢進を鎮める作用、不足している身体成
  分を補い相対的に発生している熱を冷ます作用などがある。鎮静・消炎に働く食べ物である。

  コムギ(涼)、そば(涼)、豆腐(涼)、納豆(涼)、キュウリ(涼)、ゴボウ(寒)、セロリ(涼)、ダイコン(涼)、トマト(涼)、柿(寒)、ス
  イカ(寒)、ナシ(寒)、力二(寒)など。

 ●
  穏やかな性質を示すもの。はっきりと熱性あるいは寒性の作用を現すことはない。食べ物は毎日食べるものであるから、
  身体に大きく影響を及ぼさないほうが体にとっては有難い。通常の食べ物では、この性をもつものが最も多い。

  うるち米、トウモロコシ、ジャガ芋、サツマ芋、サト芋、ギンナン、胡麻、キヤベツ、ニンジン、インゲン、椎茸、タマネギ、ブドウ、
  リンゴ、サケ、ドジョウなど。


  食べ物と調理
 
 生(なま)
    本来の性質がそのまま生きる。冷えと生野菜。

 炒める
   焼く調理に準じますが、油などを加味するので、滋潤作用が強化される。食材の水分を減らすので、大量に食べられま
   す。

 焼く
   食材の性質や効能を変化させ食べやすくする。

 
煮る
   加熱時間が長いと、熱に弱い成分は壊れるが、長時間煮ることで食材の持つ成分が完全に抽出される。食材は柔らか
  くなるので食べやすいし、胃腸のトラブルのある者は最適の方法です。


  味で効能を知る
 
 私たちが食べる食品にはすべて味があります。そして味には「効能」があり、古人は五の味(五味)として分類しています。
  • 酸味(さんみ) 
  • 苦味(にがみ)
  • 甘味(あまみ)
  • 辛味(からみ)
  • 鹹味(しおからい)の五つです 
  五味の性質
 
 酸味は肝と胆、甘味は脾胃(消化器系)、辛味は肺と大腸、鹹味は腎と膀胱にそれぞれ親和して、その臓腑を補う働きがあ
 ります。五つの味の過不足は、親和する臓腑の働きに影響し、ある臓腑に異常が発生すると、特定の味を欲しがったり、まっ
 たく嫌ったりすることがあります。  

 例えば、お酒を飲み過ぎて肝臓に負担をかけている人は、酢の物を受けつけなかったり、甘いものを食べ過ぎると胃に負
 担をかけるなどです。

  五味の効用
 

  
 
酸味
   酸味には収斂(集める)と固渋(固める)の働きがあります。酸っぱい梅干を見ただけで、よだれが貯まるのも収斂の
   集めるという働きです。
   お酢を寿司のシャリに入れるのは、中は柔らかく表面を堅く固める働きがあるからです。

   酸味は、ちょっと動いても汗が出る、寝汗をかく、慢性の下痢、尿の出過ぎ、早漏などを「出渋」らせるという働きに関与
   します。また、ストレスの解消や、体内の老廃物の処理を助けたりします。

   女性が妊娠すると酸っぱい物を欲しがるのは、老廃物を処理するためです。

 苦味
    苦味のある食べ物は、身体の熱を冷まし、乾燥さすといういう働きがあります。暑い夏になると身体がほてったり、普
    段から暑がりで冬でも薄着をしたり、いつも真っ赤な顔をしている人は、「熱證」のタイプに属します。

   苦味は身体の余分な熱を冷まし、体温のバランスをとってくれます。また、余分な水分を除く働きもあるので、苦味の
   食べ物は利尿に働くものが多いです。

   苦味の食品は、アルカロイドなど激しい作用があるので、食べ物としては少なくすべきで、苦いものは甘味も含んでマ
   イルドになっている物も少なくはありません。

 ◆甘味
   甘味には補陰・弛緩・中和の働きがあります。疲れると無性に甘いものが欲しくなる事があると思います。これは、疲れ
   とともに気血が不足しているからで、不足した気血を補ってやると疲れも早く取れるのです。このような働きを東洋医
   学では補養作用と呼びます。

   気血が不足することを[虚證]といいます。
   虚證を治すにはナツメ・ハチミツ・甘草・砂糖などの甘味のものを多く用います。

 
辛味
   辛味には、発散と運行の働きがあります。
   トウガラシのような辛味の強いものを食べると身体がカ〜ッと暑くなって汗が出てきます。
   これは発散と運行の働きです。血液の循環がよくなり、身体が温まってきます。

   辛味を多く食べると身体は熱くなり、体温を調節するため汗が出てきます。暑い国の人が辛味の物を多く食べるのは、
   身体に残った余熱を発散さ体温を調節するためです。


 ◆鹹味(からみ)(かんと読む)塩辛いことです。
   鹹味の食品には、堅くしこったものを軟らかくする軟堅・散結と言う働きがあります。漬け物にお塩を入れますが、この
   軟堅の働きを利用したもので、漬け物は表面を柔らかく中をしっこり固める働きを利用したものです。
   お酢の表面は固く中は柔かいとは反対の働きです。

   バセドウ氏病のように腫脹のみられる病気に、鹹味の昆布・アサクサ海苔が応用されます。


  海産物や肉類には鹹味の食品が多い傾向があります。海産物にはビタミンやミネラルに富み、肉類はタンパク質やアミ
   ノ酸を多く含みます 。そこで、肉体の虚損、慢性の衰弱や肉体の老化などに積極的に利用しています。

  また、鹹味には瀉下作用があるので、便秘などにも用いています。

    

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