阿弥陀寺だより

平成19年春季 第11号
  

「人に生まれ幸せ」
 〜亀井一成先生のこと〜

   
住職 野口正晧

 神戸市立王子動物園元飼育技師の亀井一成先生は、平成14年と17年の2回、阿弥陀寺文殊会の講演に来られ、50年の長きにわたり深い愛情を動物に注ぎ、その飼育実践をふまえた体験を涙を流しながら熱く語りかけ、私たちに多くの感動と人間として生きることの意味を教えてくださった。
 最初に来られた時に書いていただいた「人に生まれ幸せ」の色紙を書院に掲げてある。
 先生は今年の3月3日でめでたく喜寿を迎えられた。
 平成10年に出版された「動物園は心の学校」〜オリの中からのメッセージ〜(ポプラ社刊)のあとがきを引用して、あの時の感動を再び思い起こしてみたい。

 「ゾウの顔にウンコがついてらー。」と、笑う子もいれば、
 「洗ってやって。」と、たのみにくる子もいる。
 「あれはね、昨日の夜はウンコのついているほうを下にして寝てたんや!」
 「人間のように言葉でしゃべられへん、あの顔や体の汚れがゾウさんの言葉やねん」
 そんなふうにみてやってほしいのです。かつて、いたずらで投げた野球のボールを飲みこみ、腸につまらせて死んでしまったカバがいました。こんな悲劇は二度とくりかえしたくありません。
 動物園では、オリの中にはいってしまった動物たちの生きる姿からいろんなことを学び、弱い者をいたわる子どもたちになってほしいと心から願っています。
 動物園は心の学校なのです。
 言葉をもち、夜には家に帰れること、なんの心配もなく眠れることがどれほど幸せなことかを、あらためて考えてみようではありませんか!

4月8日は 花まつり花まつり

 4月8日は、お釈迦さまの誕生日(降誕会)です。
 お寺などでは、花まつりの行事が行われます。
 花御堂という小さなお堂におまつりした誕生仏(お釈迦さまがお生まれになった姿の像)に、お参りに来た皆さんが甘茶をかけてお祝いします。
 甘茶をかけるのは、お釈迦さまがお生まれになった時、天から甘い雨が降ってきたことに由来します。
 お釈迦さまのお誕生をお祝いするとともに、かけがえのない一人ひとりの命に感謝しましょう。

なんでも質問箱
なぜ、お墓にシキミ(樒)をお供えするの?

 お墓や仏前にシキミの枝葉をお供えします。この習慣はほぼ全国的なもののようです。
 シキミ(樒)というのは、別名を仏前草というくらい仏事にかかせない樹木で、よくお寺や墓地にも植えられています。「シキビ」といったりもします。9月から10月ごろに、猛毒の実が熟すので「悪しき実」と言われ、そのうち「あ」が取れて「シキミ」と呼ばれるようになりました。
 実だけでなく、木全体にアニサチンという有毒成分があります。
 では、どうしてシキミがお供えされるのでしょうか?
 現在では人が亡くなった後、火葬をするのがほとんどですが、昔は遺体を焼かずに棺桶に入れてそのままお墓に入れる土葬が行われていました。
 ところが、遺体を狙って鳥やオオカミなどの野生動物がやってきます。昔の人たちは、そんな野生動物にお墓を荒らされないように毒の強いシキミをまわりに置いたのです。鳥や野生動物は毒のある植物を嫌いますから、お墓には近寄らなかったのでしょう。
 それとシキミの葉は、もむと良い香りがして、昔からお線香の材料にもなっていまいた。仏さまにお供えするのは、決して毒をお供えするのではなくて、良い葉っぱの香りをお供えしていると考えた方がいいかもしれませんね。

 


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